SORAでは指輪に様々な金属を使います。その中には、「レアメタル」と言われるものもあり、その代表がチタン、タンタル、ジルコニウムです。チタンはともかく、タンタルやジルコニウムはあまり馴染みがない金属だと思います。一体どんな金属なのでしょう?

レアメタルは、鉄やアルミなどのポピュラーな金属(ベースメタル)や金や銀などの貴金属以外で、産業などに使われている金属全般を指します。「レアメタル」というのは日本独自の呼び名で英語では「minor metal」と呼ばれ、レアメタルだからといって珍しいわけではないのです。 実際、チタンは地球の地殻を構成する成分として9番目に多い元素で決して少ないものではありません。しかし、その性質から産業用など様々な用途に用いられており、重要な素材であることは間違いありません。

それでは、3つの金属の性質を具体的に見ていきましょう。
まず、原子番号で言うと、チタンが22、ジルコニウムが40、タンタルが73です。この原子番号はある程度、その元素の性質を示すもので、それをわかりやすく表示したものが周期表です。

<参考:周期表 wikipedia

周期法でこの3つの金属を見てみると次のようになります。チタンは22のTi、ジルコニウムは40のZr、タンタルは73のTaです。ここでポイントとなるのはチタンとジルコニウムが縦に並んでいること。縦に並んでいる元素は基本的に同族と呼ばれ、似た性質を持ちます。わかりやすいのは29,47,79と縦に並んだ銅、銀、金。オリンピックのメダルでおなじみですが、同じ11族で似た性質を持ちます。

カラーの正体「酸化被膜」の秘密とは?

さて、チタンとジルコニウムですが、この2つは第4族(チタン族)に属し、共通の性質としては4価の陽イオンになりやすく、結果、酸化しやすいというものが上げられます。
金属の酸化というと鉄や銅の錆を思い浮かべてあまりいいイメージではないですが、このチタンやジルコニウムの場合、一般的な錆とは異なる「酸化皮膜」が生じます。タンタルも異なる族ですが、同様に酸化皮膜を生じる性質を持っています。

この酸化皮膜というのは、表面の部分だけが空気中の酸素と反応して酸化してできる膜のようなもの。酸化物になることで安定し、酸や塩に対して強い耐食性を持つようになります。ステンレスが錆びないのも、配合されたクロムが酸素と結合してできる酸化皮膜のおかげで、チタンやジルコニウム、タンタルの場合も同様に酸化皮膜によって守られているのです。
チタンは酸化皮膜の強い耐食性を活かして様々な用途に用いられています。おなじみなのは医療用、人体に入れても腐食したりアレルギー反応が起きることがまれなので、人工関節などにも使われています。

ジルコニウムはチタンと比べると貴重(地表の存在量は約20分の1)なので、チタンほど身近ではありませんが、酸化ジルコニウムはコンデンサや差し歯のブリッジなどに用いられることもあります。 タンタルはさらに貴重(地表の存在料はジルコニウムの約100分の1)ですが、酸化皮膜がコンデンサとしての特性が非常に良く、近年価格高騰が激しいとも言われます。コンデンサは電子基板などに用いられる「蓄電器」で、身近なあらゆる電化製品に使われているのです。

指輪に用いる場合、人為的に酸化皮膜を作る陽極酸化皮膜が用いられます。これによって皮膜の厚みを自由に変えることができます。皮膜自体は透明ですが、屈折し干渉するので、その厚みによって見える色あいが変わってくるのです。
陽極酸化皮膜は、電解質溶液に金属を浸し、金属に通電すると生じます。と言われてもよくわからないと思いますが、中学か高校の理科でやった水の電気分解の実験のように、液体に2つの金属を入れてそこに電気を流すと、陽極(+)側では酸化が起きます。
水の電気分解でも陽極側で酸素が発生するのでイメージしやすいのではないでしょうか。 それによって酸化するので金属の表面に酸化皮膜ができるのですが、この時、電圧が大きくなれば膜が厚くなるのです。

具体的にどのような色になるかは、元の素材の色と皮膜の厚さによってきまします。元の素材の色は、チタンとジルコニウムは銀白色、タンタルは銀灰色。金属の色については金とプラチナのところで説明しましたが、タンタルは反射率が全金属中で最も低いのでかなり黒っぽく見えます。

その素材の上に透明の酸化皮膜がある場合、酸化皮膜で薄膜干渉が生じてそこに色が生じます。皮膜の厚さと色の関係は以下のようになります。 

【波長と色の関係】 
ピンク系 0.00065~0.0007mm 
オレンジ系 0.0006~0.00065mm 
イエロー系 0.00055~0.0006mm 
グリーン系 0.0005~0.00055mm 
ブルー系 0.00045~0.0005mm 
パープル系 0.00035~0.00045mm 

この膜の色は光の干渉によって見えるだけでそのものに色がついているわけではないので、地の色が透けて見えます。そのため、チタンとジルコニウムではこの色が比較的そのまま出るのに対して、タンタルの場合は黒っぽくなるのです。 同じようにみえる金属でも、実はそれぞれに特徴があって、その特徴によって使いみちや使い方が変わってきますし、様々な工夫によって色も変える事ができるのです。金属って面白くないですか?