KAKITSUBATA
杜若

ジルコニウムを直に手彫りする

指輪となった杜若(カキツバタ)は、手彫りの造形と花や葉を彩るみずみずしい色、内側から側面に渡る豪華な金の装飾が特徴です。

柔らかく加工しやすい金やプラチナと異なり、ジルコニウムは曲げて接合することができないため、平面の状態で削れません。

そして、とても固い金属であるために削り出すこと自体が容易ではないこと。

それらの困難を感じさせない優美な表現にこそ、この手彫りの価値はあります。

彫りが完成した杜若は、通常の発色方法とは異なる特殊なやり方で、少しずつ確かめながら、微妙な色の変化を生み出すように発色させていきます。

こうして手間をかけて彩られた杜若は、色が混じり合い溶け合う水彩画のような魅力を感じさせます。

金色に輝く指輪の内側には金箔が貼られ、江戸時代の尾形光琳作「燕子花図」を連想させます。

純金の上にさらに金箔を用いたこの装飾は、目で楽しむためのものであり、実際に指を入れると金箔は剥がれてしまいます。

実用性を度外視してデザインされたこの「杜若」は、アートと技術をつなぐコンセプチュアルな作品として制作されています。