「曲線はある意味、“誰か”のデザインで、有限な感じがするんです。逆に直線は、人のデザインが介在しないところに、ある種の神の目線というか、人智が介在しない深淵な無限を感じます」
SORAのリングはどちらかというと曲線を活かしたデザインが多いですが、もちろんお一人お一人の好みや価値観によって、無限の選択肢のなかからデザインを編み出していきます。
ドリアンさんはドラァグクイーンの衣装やウィッグをデザイナーさんにお願いするとき、細かく注文するわけでも、丸々委ねてしまうのでもなく、自分と相手が持ち寄るものが合わさって生まれる“ケミストリー(化学反応)”を楽しんでいるといいます。
今回の指輪づくりにおいても、ドリアンさんのその姿勢が垣間見えますが、オリジナルリングの魅力はまさに、お客様とクリエイターとのケミストリーによって唯一無二のものが生み出される点だと思います。
ここまでの対話で、「シンプルにつるんとした指輪になるかな」とドリアンさんはイメージしていたそうですが、そこへ新たな“ケミストリー”の提案をした丸山代表。
「ワンポイントで、どこかくぼみを作ってはどうですか?」
指輪には宝石を使うことも多いですが、敢えて石を使うのではなく、くぼませるというアイディアです。
「きれいな形じゃないのがいいですね。ドリアンもマサキも、それぞれ何かしら欠けていて、でも欠けているからこそ、もっと頑張れるみたいなところもあるんですよね」とドリアンさんも賛成。
こうして、2種類の金属それぞれの側にくぼみを施すことになりました。
これでデザインは決定。最後に「内側に刻印を入れたり、マークを入れたりしますか?」と丸山代表が尋ねると、ドリアンさんは「じゃあ、私のモットー、THE SHOW MUST GO ONで!」と即答。
「どんなときでもショーは続けなければいけない」という意味の諺ですが、ドリアンさんはこの「ショー」をいわゆる表舞台だけでなく「誰かと会ったり関わったりする時間のすべて」と捉えているといいます。いわば、人生そのものがショー。そして、誰もが自分という人生のショーの主人公なんだという想いも、この言葉に対して抱いているそうです。
さぁ、これですべてのデザインが決まりました。果たしてドリアンさんの人生にリンクする指輪に仕上がるのでしょうか?
スチール撮影:伊藤圭