はじめに
SORAでは創業以来、完成した新作の指輪を自然の中で撮影し、プロモーション写真やムービーにしてきました。今回のJOURNEY OF RING(ジャーニーオブリング)では、厳冬期の北海道の情景と、そこに暮らす様々な野生動物(ワイルドライフ)の姿を撮影しました。
近年の気候変動や地球温暖化により、野生動物が暮らす自然環境の変化は著しく、野生動物の個体数の急激な変化や、生存への影響が危ぶまれます。地球温暖化の要因となる温室効果ガス排出は人間の活動によるものです。
真っ先に環境の影響を受けることになるのは野生動物たちです。野生動物が追いやられることなく、生き続けることのできる自然環境を守る責任が私たちにはあります。
今回は北海道のサケについて、その生態や生息環境の変化について調べてみました。まずは自然の中で暮らす野生動物のことを知る事から始めたいと思います。
サケと聞けば、おにぎりの具や、朝食のおかずに欠かせないその切り身の姿は庶民の日本食代表のような存在で、日本人にはとても馴染みぶかい魚です。近年はお寿司のネタとして脂の乗った生サーモンは子供から大人まで好まれる人気寿司ネタとなっています。
あらためて知る、サケの歴史と生態について
北海道東部にある標津町では、1万年前の縄文時代の遺跡からも大量のサケの骨のかけらが発見されています。当時から秋の川に遡上して産卵するサケを採り、長い冬に備えたのでしょう。
遡上の時期を毎年予想がしやすく、大量に遡上するサケは、安定した食料資源として確立された自然の恵みだったのです。アイヌ語で「カムイチェップ(神の魚)」と呼ばれ、食料のみならずサケ皮を使った衣装や靴が作られ、日々の生活に根差した魚でした。
現在の分類では、サケ科サケ属にはシロザケ、ギンザケ、カラフトマス、ベニザケ、マスノスケ、サクラマスなどが含まれ、寿司ネタでおなじみのサーモンはアトランティックサーモンと言い、タイセイヨウサケ(サルモ)属に分類されます。
もともとサケ科魚類は川に暮らす淡水魚でした。その進化の歴史の中で、よりエサ資源が豊富な海まで降りることによって、大きく成長し、生まれた母川に戻り産卵をするライフサイクルを獲得していきました。現存するサケ科魚類の中でも、淡水域だけで暮らす種、海へ降りる種、同種の中でも両パターンが見られる種と、多様なパターンが見られます。また、自分の生まれた川ではない川へ遡上する個体も少数ながら確認され、そのような個体は、新天地を求め新たな可能性を探る種としてのチャレンジャーの可能性を秘めています。
サケの暮らす自然環境の変化は?
サケが暮らす川の環境の変化は多少の事であれば、適応がなされて生存への影響は少ないのですが、ダムや堰の建設でそれより上流にのぼることが出来なくなったり、水質汚染によってサケが川に戻らなくなります。
シロザケなどは生まれてすぐに海へ降り3~4年間を海で生活するので、海の環境の変化の方がより影響をうけることになります。
1952年に国主導の水産庁北海道さけ・ますふ化場が設置され、それ以前の明治期から人工孵化は行われていました。いま目にするほとんどのサケが人工孵化で放流された個体で、数年後に川に帰ったサケは卵と精子を採取され、また孵化による増殖をされて稚魚が川に放流されます。
2022年秋は千歳川に例年平均の倍以上の58万尾の遡上があり予想外の急増をしました。3年前、稚魚が海へ出た時の海水温が育成に適していたのではないかと要因が推測されています。
サケと人間が共に生きる方法とは?
日本有数のサケの産地として知られる、北海道標津町にある「標津サーモン科学館」へ訪問し、副館長西尾様にお話を伺いました。
サケの進化の歴史や、その多様な生態は、それを取り巻く生命に多くの恩恵を与えてきたとても重要な生物であることが分かりました。例えば、海の栄養を森に運ぶ貴重な役割を担っており、遡上したサケは、クマやワシの餌になるのはもちろん、産卵後に死んだ個体が分解されながら有機物は土壌を豊かにし、森林の成長を促進してもいるのです。
直近のサーモン科学館の取り組みを伺うと、これまでの孵化増殖事業に加えて、人工孵化だけでなく、自然産卵を増やしていくために漁協や行政とともに産卵環境を整備する活動も行われているという未来のお話も聞くことが出来ました。
そして西尾副館長には、みなさんにもっとサケを食べてほしいと締めくくっていただきました。小さな川から大海に出てまた同じ川に戻り産卵するサケは、その道程で様々な生物の命をつなぐ存在となっているのです。私たち人間も同じ地球に住まう生命。サケを食べて命の連鎖に想いを馳せたいと思いました。
指輪に想いを込める【サケの結婚指輪】
人間による自然環境を一方的に消費する活動は自然を破壊し、野生動物たちの生活環境をおいやり、野生動物そのものを絶滅させてきました。これからは野生動物たちの暮らしを守り、生活する自然環境を保全していく事が必要です。
そのためにも指輪に野生動物の姿を映しとり、日々身につけて自然とのつながりに想いを馳せてみませんか。
サケの生涯が連続的にレーザーマークされたこの結婚指輪は、「LEMNISCATE(レムニスケート)」というSORAオリジナルの融合デザインがベースになっています。ふたつの指輪を合わせて現れる八の字の無限軌道は、川から海、そしてまた川に戻りさらに大地へと数多の命を繋げる、地球を舞台にしたサケの壮大な旅を緻密に表現したものです。
指輪やジュエリーの起源は、自然環境にある鉱物や貴石・宝石を身につけたことが始まりです。その歴史は旧石器時代に遡り、貝殻に穴をあけて首飾りにしたものが10万年前の遺跡から出土しています。人々は魔除けや、お守り、権威の象徴として地球の恵みをそのまま纏うことで、自然が持つ大きな力を日々感じとり、自然と繋がった暮らしをしていました。
現代では貴金属や宝石を富の象徴として身につける時代になることで、地形が変わるほどに大地は掘り起こされ、環境は破壊されていきます。現在のジュエリーや宝石から感じられるものは自然環境の悲鳴なのかもしれません。
エシカル・サスティナブルな消費活動のために
人間が自分たちだけの為に自然環境から豊かさを得ていた時代は終焉を迎え、人間は自然環境を守りながら、野生動物とともに環境の変化に適応して暮らしていく時代の到来です。
エシカルジュエリー、サスティナブルジュエリーというジャンルがあります。エシカルとは「倫理的」「道徳上」という意味を持ち、私たち人間のその消費行動が人・社会・地域・環境に配慮されていることをさします。同じようにサスティナブルとは、最近ではSDGsの頭文字「S」としても耳にする機会が増えた「持続可能な」という意味で、こちらも人・社会・地域・環境に無理な負荷をかけずに、健全な消費サイクルが持続することを言います。
一生身につける結婚指輪は「人・社会・地域・環境」に配慮されたエシカルな消費でしょうか。自然保護や野生動物を守る活動を共に続けていきましょう。
【協力】
《ライター紹介》
SORA営業企画部マーケティングチーム所属
日本自然保護協会(NACS-J)自然観察指導員
坂本良太
宇宙撮影でもおなじみマーケの坂本。普段は企画業務をこなしつつイベント運営、機材の試作までなんでもやる課のアラフォーパパ。最近気になることは宇宙創生とベルトサンダー。