はじめに
SORAでは創業以来、新作の指輪が誕生すると大自然の中へ行き、スタッフ自ら指輪を撮影しプロモーション写真やムービーとして活用してきました。
今回はマイナス23℃の厳冬期の屈斜路湖で【冬】をテーマに、さまざまな結婚指輪を撮影しムービーカタログに収録。
この活動「JOURNEY OF RING Winter2022」では、屈斜路湖で目にした貴重な自然現象の美しさと、その背景にある地球が太陽を一周することであらわれる【四季】という大きな輪っかと、小さな輪っか(指輪)に想いを馳せるプロジェクトです。
屈斜路湖(くっしゃろこ)とは?
屈斜路湖とは、北海道弟子屈(てしかが)町にある日本最大のカルデラ湖で、冬季には周囲57kmもの巨大な湖の全面が凍結する雄大な湖です。
また屈斜路湖の隣には日本一の透明度である摩周湖(ましゅうこ)があり、ふたつの湖の間にガスを噴出し続ける荒々しい姿の活火山である硫黄山(アトサヌプリ)もあります。
屈斜路湖岸は温泉が湧く箇所がいくつもあり、地球の活発な火山活動が身近に感じれるワイルドな場所です。地形に関して空豆型の屈斜路湖ですが、もともとはカルデラ湖なので右半分、東側部分は4万年前にあったマグマの流出で埋め立てられてしまいました。地図をひらいて目を細め見てみると、太古の屈斜路湖が丸いカルデラ形状のシルエットだったことが想像できます。
そんな屈斜路湖周辺では、太古から続く地球の火山活動が今も現在進行形で残っており、地形や自然現象、そしてその特殊な環境で生き延びる生物の生態に触れられる希少な土地となっているのです。
《冬の屈斜路湖で見れる自然現象》
1月中旬から湖面が凍結し始めると、気温や湿度、天候条件によってさまざまな自然現象が現れます。その姿は神出鬼没。現地に毎日足しげく通うことで貴重な光景を目にする確率が上がります。
【フロストフラワー】
湖面にたくさんの白い花が咲いたような現象を見せるフロストフラワーは、雪が降っていない凍結した湖面で氷の結晶が花のように成長したもの。周囲で湧き出る温泉の温度や、湖面の氷の厚みがまだ薄い状態などのいくつかの条件が揃うと水蒸気が結晶化し、さらに巨大化して、早朝に氷の花(フロストフラワー)を咲かせるのです。
氷なので朝陽をあびれば、その温度ですぐに溶けてゆきますので、その姿を見ることができるのは早朝の日の出のタイミング。日陰にはシナっと張りのないフロストフラワーが残っていることもあります。
【アイスバブル】
凍結した湖面の氷の中をよく見ると、場所によって丸い空洞の泡が幾重にも重なっているアイスバブルを見ることが出来ます。これは湖の底から湧く温泉のメタンガスが泡となり氷に閉じ込められたものです。
凍結した湖面には、たまに落とし穴のように穴が開いています。ここはまさに温泉が湧いている箇所であり、その温泉とそのガス成分が湧きあがり、一部分だけ凍らないのです。
ですが、いずれこの穴も周囲の凍結が進むことで、氷の厚みが増してゆき、穴が小さくなり閉ざされてしまいます。その時に放出されないガスが閉じ込められ、氷の内部に何層にも泡がたまっていき幻想的な空洞を形づくります。
この光景をはっきりとみるにはさらに大事な条件があって、雪が降らないことを祈らなくてはなりません。アイスバブルがたくさんできていても雪が降ってしまえば湖面は真っ白になりその下の状況は全く分からないからです。
【御神(おみ)渡り】
湖面の凍結が進み氷の厚みと面積が増していくと、今度は凍結した湖面は夜間と日中の温度差や、風の影響などで収縮が起こりヒビ割れます。この時に亀裂が入る音が電子音のようにキューンと響き渡ります。
日中に割れた箇所が夜間にまた凍結をする、という繰り返しの中で湖面の氷の膨張が一気に天空に向かって立ち上がる現象が「御神渡り」です。
これは長野県の諏訪湖でも結氷の際に現れることで有名で、神様の通り道と言われています。北海道でもアイヌ語で「カムイ パイカイ ノカ(神が歩いた跡)」と言われており、屈斜路湖でも30年前には人の背丈くらいにそびえ立つ御神渡りができたこともあったそうです。
温暖化の足音
今回、冬の屈斜路湖ならではの貴重な自然現象を垣間見ることが出来ました。都市で生活する者にとっては貴重ないい思い出です。しかし、毎年変わらず見えるのか?またそれが温暖化により、今後見えなくなる!?としたら、よく考えると不安になってきます。
現代人の暮らしが今後も、温室効果ガスの排出量を増やし続け、このまま温暖化が進むことでこれら現象の成立条件が無くなるかもしれません。これまでも環境変化は緩やかにありましたが、今後はますます激しく変化することでしょう。屈斜路湖だけではないですが北海道の湖の全面結氷する日数が減ってきており、今後結氷すること自体が無くなってしまうようなことがもしあったとしたら、ご紹介した自然現象は絶滅危惧種なのかもしれません。
温暖化の影響は様々ありますが、北海道の積雪の変化があります。積雪量が減るということだけでなく、温暖化は大気中の水蒸気を増化させるので局所的な大雪が増え、サラサラだった雪質が本州の雪に似たベタ雪になってきているようです。大きな変化が起こっているようです。
後編では、北海道における気候変動と自然環境の変化に関して触れてゆきたいと思います。
《ライター紹介》
SORA営業企画部マーケティングチーム所属
日本自然保護協会(NACS-J)自然観察指導員
坂本良太
宇宙撮影でもおなじみマーケの坂本。普段は企画業務をこなしつつイベント運営、機材の試作までなんでもやる課のアラフォーパパ。最近気になることは宇宙創生とベルトサンダー。