桜ライン311

偶然の重なりで出会ったふたり

清水さまご夫妻の出会いは、陸前高田での地域支援活動がきっかけ。東日本大震災で発生した津波の最大到達地点に桜を植樹する「桜ライン311」という団体のスタッフだった健太さまと、他の団体のインターンだった真紀さまが地域の活動を通して出会いました。今は健太さまは先に陸前高田市に移住され、東京でのお仕事を続けられている真紀さまも将来的に同居される計画なのだそうです。

 

高校時代からボランティアに興味があり、岩手大学入学後ボランティアサークルに入られた真紀さまと、陸前高田に惹かれるまではアメフトに熱中していたという健太さま。おふたりが出会い、人生のパートナーとなられたことは、見えない糸に導かれた結果だったようです。


「知り合って交際が始めるまでは、2~3週間ぐらい。結婚を考え始めたのはずっと後のことです」と健太さま。「陸前高田で僕が起業したんです。地元の輪の中へ入っていく決心をしたタイミングで、真紀から転職の話を聞きました。転職したら3年は東京から動かないだろうと思って、結婚の話をしました。結果的に結婚したのは昨年、交際5年目のことです」。

プラチナとタンタルの結婚指輪

支え合える芯の強さと新鮮さ

おふたりは、お互いのどんなところに惹かれたのでしょう。健太さまは、「真紀は自分のペースをちゃんと持っているんです。支え合えるような、しっかりした一面がある」。真紀さまは、「私たちは考え方や興味が違っていて、それが新鮮でもあり一緒にいる面白さでもあります。それから、行動力がある部分は尊敬しています」と話されていました。

 

「今はまだ普段の生活で離れた場所にいますけど、仕事でしんどいなと思った時は、真紀がいるから頑張らなきゃって気持ちになれます」と、健太さまは真紀さまの存在が仕事へのモチベーションにつながっているそうです。

プラチナとタンタルの結婚指輪

タンタルとプラチナが織りなす新しい個性

オーダーされた指輪について、「プラチナとタンタルでお互いの人柄・関係性を合わせたような指輪に仕上がった」と語られていた清水さまご夫妻。


「結婚指輪の話になった時に、僕が好きだった漫画に出てきたタングステンを使えないのかなと思って。いろいろ探していたら、タンタルを知り、その存在に惹かれました。真紀は黒いのがいい、みたいに言っていて、キラキラした指輪はちょっと違うかなっていうのがお互いにあったんですよね」と健太さまが当時を振り返ってくださいました。

「それでSORAでタンタルがいいと思っていることをお話したら、タンタルとプラチナは性質が大きく異なり、基本的に難しい組み合わせだと教えてくれました。でも、SORAの技術ならできると言ってくれて」おふたりの性格や個性の違いを、ふたつの金属同士の重なりで表現する面白さ。SORAへのオーダーには、そんなおふたりの期待が込められていました。

復興を目指す陸前高田市

人のつながりに惹かれて陸前高田への移住を決意

最初は陸前高田で3年ほど生活された後東京へ戻られるつもりだった健太さま。移住の決意に変わったのは、なぜだったのでしょうか?
「社会経験がほとんどない状態で桜ラインのスタッフに入ったので、上の人たちの真似をしておけば大丈夫だろうという考えがあったんですよね。それを見抜かれて怒られてしまったのですが、僕はそれが『ありがたいな』と思ったんです。それでこの町でもうちょっと頑張ろうと思ったら、いろんなことが面白くなってきて。自分でこういうことをやってみよう、と能動的になれたんです。それで気付いたら3年経っていました。次にどうしようかと考えた時に、趣味で始めた映像制作が仕事として形になってきていたんですよね」と健太さま。出会った人たちに触発されて、仕事のやりがいや面白さが広がっていったようです。

 

真紀さまにも移住についてお聞きすると、「もしも独りだったとしても、いずれ移住したいという考えは持っていました。今は東京で仕事をしていますが、地方で暮らしたかった。大学進学の時に自分の意志で岩手を選んで、自分で作った人間関係があるので岩手には思いの強さがあります」。人生の偶然の出会いが重なって、おふたりがその時々での最善の選択をしてきた結果が今、結婚、移住というかたちに実っているのでしょう。

プラチナとタンタルの結婚指輪

離れている時間も心はひとつ。架け橋になる指輪

おふたりが結婚指輪を身に付けるようになって1年。いま、指輪はどんな存在でしょうか?
「指輪を作った時はまだ実感がなくて。そこから結婚式が終わり、指輪を付けるようになり…。ある時、コンビニで戸籍謄本を出す必要があって。出力したら、そこに真紀の名前があった。自分も指輪をしていて、初めて結婚の実感が湧きました」と健太さま。


真紀さまは「私も、結婚後も同じような生活を続けていたのであまり実感がありませんでした。ただ思うのは、これから一緒に生活するようになって当然ケンカすることもあると思うのですけど、指輪を見てそれでも一緒にいたい、そもそも違う人間なのだからと思い出させてくれるんじゃないかなって」。

『海風がまじる頃に』ふたりのこれまでとこれから

オーダーされた結婚指輪にタイトルを付けるなら、という問いかけに「難しいですね」と考えこんでいたおふたり。「ふたつの違うものが混ざり合うイメージがあります。ひらがなで柔らかく『まじり』なんてどうかな」。別々の人生を歩んでこられたおふたりが陸前高田の海風に導かれ、出会ったこと。おふたりの個性がまじり合ったこと。
それからおふたりの指輪を担当させていただいたSORAのデザイナー大竹にもご相談いただき、『海風がまじる頃に』というタイトルが生まれました。

プラチナとタンタルの結婚指輪

周りの人たちと分かち合う、当たり前のことが幸せ

最後に、おふたりが考える未来の幸せについてお聞きしました。

「僕はわりと当たり前が一番いいと思っています。この町で暮らしていると、やはり震災でご家族をなくした方の話を聞くので、当たり前って当たり前じゃないということを強く感じます。だから、真紀がいてくれる、来てくれる、一緒にいられる当たり前の状況が一番の幸せだと思っています」と健太さま。


「結婚に含まれる感じですが、よく感じるのは人とのつながりを感じていられたら一番幸せだなって。私の性格上、自分からアクティブに人に声をかけていくタイプではないんですけど、人に頼ってもらったり感謝の言葉をもらったりした時、『頑張って良かったな』と思います。ですから、やっぱり『人』こそ幸せだなって感じています」と真紀さまも笑顔が輝いていました。


お互いの個性を認め合い、支え合っているおふたり。その指には、ふたりだけの指輪が輝いていました。海風がまじる頃には、出会いの土地でともに暮らそうという未来の約束をこめて…。

 

担当デザイナー:大竹
担当クリエイター:森川
オーダー店舗:SORA表参道店