はじめに

SORAでは創業以来、完成した新作の指輪をスタッフが自ら自然の中で撮影し、プロモーション写真やムービーにしています。今回は、沖縄本島の海で【夏】をテーマに大自然の情景とオリジナルデザインの結婚指輪を撮影し、ムービーカタログに収録。

 

この活動「JOURNEY OF RING Summer 2022」は、沖縄で目にした青いサンゴの海や輝く白砂の美しさを追い、その背景にある地球が太陽を一周することであらわれる【四季】という大きな輪っかと、小さな輪っか(指輪)に想いを馳せるプロジェクトです。
 

沖縄の海

琉球列島の成り立ち

沖縄の亜熱帯の気候と、青く透き通る海はまさに南国の風景。大地の成り立ちや、文化的な歴史を振り返っても、日本列島の中で特別な地域と言えます。

 

島の成り立ちをさかのぼると、170万年前に海底でユーラシアプレートに張り付いた海洋プレートの付加体が隆起することで琉球列島の土台ができました。その後、海水面の上下運動に伴いサンゴ礁が発達することで、サンゴや貝殻が堆積した白さが特徴の琉球石灰岩の地層ができて、さらにその上を覆う表層に、亜熱帯植物の腐葉土や、風化した砂が堆積した「マージ」という赤土の土壌が形成されました。

ソラJORロケチーム

沖縄の透き通る青い海と白い海岸は、琉球列島の形成に大きく関わったサンゴの存在が切っても切り離せません。

 

JOURNY OF RING Summer 2022では、沖縄ならではの透き通る海や、マグローブの森、そして現在も生存が脅かされているサンゴの海を観察し、気候変動の影響とサンゴ保全の取り組みをお伝えしていきます。

サンゴ

サンゴは植物?動物?

沖縄の白いビーチはサンゴや貝のかけらなど、石灰質の堆積物によるものです。長い年月をかけてサンゴの骨格が、波や風化によって砕かれて小さくなったり、またブダイなど歯が固い魚が噛みくだいた結果、白い砂浜になります。

島周辺にある水納島などの小島は、島全体が隆起したサンゴ礁だったりするので、まさにサンゴによって大地が形成されたとも言えますね。

 

サンゴは一見すると植物っぽくもあり、そして「海の森」とも例えられることから、植物や海藻と間違われます。実は、イソギンチャクやクラゲの一種の刺胞動物という系統の動物。枝のように硬いハードコーラルと、水槽の中で水流に任せて揺れる柔らかいソフトコーラルのふたつに大別され、硬い石灰質の骨格を持つハードコーラルがサンゴ礁を形成します。サンゴ自体は色がなく、骨格の中に褐虫藻という植物プランクトンを取り込んで共生しており、光合成をしています。

サンゴの祖先となる床板(しょうばん)サンゴは、5億4千万年前の古生代カンブリア紀の海に誕生しました。その後、現在まで進化を繰り返しながら命をつなぎ、現在地球の海洋面積の1%の、60万平方kmの面積がサンゴ礁となっています。

サンゴが「森」とも言われるゆえんは、その1%のサンゴの面積に全海洋生物の25%が依存して生きていると言われているからで、まさに海における「生命の森」のような存在なのです。

 

そして、5憶年続くサンゴ礁などの炭酸カルシウムが堆積してできた石灰岩の地層は、人間によって採掘され「石灰」として、医療品、食品、化学工業、建築に活用されており、現代文明に欠かせない物質となっています。

サンゴの白化現象とは?

【要因.1】 海水温度の上昇

海水温度が30℃を越えるとサンゴの中の褐虫藻は生息できなくなり、いなくなってしまいます。この状態が白化現象の始まりで、共生する相手のいなくなったサンゴは養分の供給が無くなり、間もなく死滅してしまいます。

 

1950年以降、全世界的な海でサンゴが減ってきていて、全世界の20%近いサンゴ礁が白化によって喪失したと言われています。近年で一番影響があったのは1997年から1998年にかけてのエルニーニョ現象と言われ、この時に海水温度が30℃以上になり、全世界のサンゴの1/3が、現在も絶滅の危機にあると言われています。

【要因.2】 オニヒトデの大量発生

オニヒトデはサンゴの褐虫藻を餌にして食べる生物です。通常サンゴの数に対して一定数オニヒトデが存在し、サンゴは褐虫藻を捕食されながら、またそれを補う成長をすることで共存する生態系でしたが、1950年代後半から宮古島など沖縄の各地でオニヒトデが大量に発生してサンゴが白化していきました。

 

このオニヒトデの大量発生の原因が分かっていないのですが、12,3年の周期で大量発生すると言われていたりもしますが、まだ解明はされていません。オニヒトデを捕食する魚が、人間の乱獲で減ったことや、人間が海に流す生活排水の有機物で、海水の窒素やリンなどの栄養塩が増え、植物プランクトンが増えてしまい、それを餌とするオニヒトデも増加しているという説などがあります。

その大量発生の裏には、大きく人間の生活が影響している可能性が示唆されています。

【要因.3】 赤土の海洋流出

沖縄特有の国頭(くにがみ)マージと呼ばれる酸性の赤土が海に流れ出てしまう事も、サンゴの白化現象の要因と考えられています。

透明な海で光合成をすることで生息するサンゴは、日光の遮られた海では光合成できず死滅してしまいますし、流出してきた土を直接かぶることで窒息死してしまいます。

 

そもそも土壌が赤土である理由に沖縄特有の気候が関わっています。本州の土壌は、枯れ葉が長い年月をかけて堆積して腐葉土となった黒土という地層が厚くなって、赤土の上に分厚く形成されるのですが、亜熱帯の沖縄では、温暖で土壌の分解が早いため、黒土は厚くはならないのです。

よって保水性がない赤土が地表にすぐに露出しやすく、雨が降ると簡単に流れ出してしまい、河川も海まで短いことから短期間で海に土が運ばれて、サンゴの海を赤く染めてしまいます。

白化したサンゴが訴えるメッセージ

世界的なサンゴの白化現象は、海水温度の上昇が大きな影響と考えられています。日本近海は過去100年の間に0.7℃〜1.7℃水温が上昇し、全世界の海の平均的な上昇率より高い値を示しています。

沖縄近海のサンゴの白化は、上記のオニヒトデの大量発生と、赤土の流出が大きく影響していると考えられています。

 

これらは戦後の復興期、高度経済成長期における土地開発と、さらには生活者が増えたことによる生活排水の増加によって海洋汚染が広がった背景が大きくありました。

そして現在までに、1970年に水質汚濁防止法が、1995年には赤土流出等防止条例が制定されました。過去の甚大な海洋汚染は、昔に比べると抑制されていますが、まだその影響が残っているとも考えられます。

JOURNEY OF RING撮影チームも、まずは沖縄の海に潜りサンゴの白化現象を確認しました。綺麗な海に潜って見たサンゴの白化現象は、自分たち人間の日々の生活による影響と思うと胸が痛くなります。

 

後編では、サンゴの保全活動をされている方々に取材をしながら、活動を始めた経緯や、具体的な保全活動の内容について伺いながら、これから私たちが出来ることや、考えなくてはいけない事にせまります。

《ライター紹介》

SORA営業企画部マーケティングチーム所属

日本自然保護協会(NACS-J)自然観察指導員

坂本良太

 

宇宙撮影でもおなじみマーケの坂本。普段は企画業務をこなしつつイベント運営、機材の試作までなんでもやる課のアラフォーパパ。最近気になることは宇宙創生とベルトサンダー。