伝統と現代の架け橋 〜 クリエイターの挑戦

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「Resonance 〜伝統と現代〜」プロジェクトが生まれた背景には、 SORAの加工技術の進化がありました。 特に、これまで非常に加工が難しいとされてきたタンタルの加工技術が大きく進化したこと。そして、タンタル特有の主張しすぎないダークグレーの色が、古くから愛されてきた伝統工芸の持つ色彩感覚や世界観に調和するものがあると感じたこと。

 

この2つの要素が結びつき、伝統と現代を融合する作品づくりへとつながっていきました。

 

「技術的な進化と、タンタルの色合いが持つ独自の魅力が、伝統と現代をつなぐ作品を生み出すきっかけになりました。」クリエイターの荘司はそう語ります。作品づくりにあたっては、デザイナーの髙田とタッグを組み、 百人一首の和歌の世界を、指輪として表現することに挑戦しました。

和歌の情景を形にする 〜 デザインのこだわり

 

「仄桜(ほのさくら)」「忍音(しのびね)」「澄雲(すみくも)」「深々(しんしん)」。 今回の作品は、それぞれ春・夏・秋・冬の季節をテーマに、百人一首に詠まれた情景を、指輪に落とし込んだものです。

 

デザイナーの髙田は、 上の句と下の句、それぞれに印象的なモチーフがあることに気がつきました。そこで指輪の内側と外側に、それぞれのモチーフを描くことで、指輪全体で和歌の世界観を表現するアイデアが生まれました。

 

「「仄桜」では、満開を過ぎた桜のイメージとして水面に浮かぶ桜の花を外側に、 内側には雨が降る情景を表現し、 物思いや儚さをデザインに込めています。和歌に詠まれた風景や空気感を、指輪という小さな空間にどう落とし込むか。デザインを考える上で、一番こだわったポイントです。」髙田は、そう振り返ります。

伝統工芸×現代技術 〜 技術で描く和歌の情景

 

デザインされた情景を、実際に指輪へと落とし込むためには、高度な加工技術と繊細な手技が必要でした。特に、タンタルという素材は加工が難しく、これまでの彫金技術では対応できない難しさがあります。

 

「どんな道具を使えばこの表現が可能か。まずはそこから考え、必要な道具はすべて自分で作りました。最終的に、150種類ほどの道具を作ることになりました。」 クリエイターの荘司は、そう語ります。

 

さらに、素材の質感や色味にも徹底してこだわりました。 「仄桜」では、桜を象徴する華やかなピンクではなく、プラチナの白を基調に儚さを表現。 その上で、ほんのりとゴールドやピンクゴールドを差し色として加えることで、 和歌の持つ切なさや余韻を映し出しています。「深々」では、雪景色にはプラチナを、 月にはホワイトゴールドを使用。 同じ「白」でも、素材によって異なる輝きや質感を持たせ、奥行きのある冬の情景を表現しています。

 

「和歌の世界観や意味がずれないように、 素材や色については何度も二人で話し合いを重ねました。」 髙田と荘司の言葉からは、ものづくりへのこだわりと、この作品への強い思いが感じられます。

伝統から未来へ 〜 作品を手にする人へ伝えたいこと

 

今回の作品は、デザイナー髙田とクリエイター荘司が、それぞれの得意分野を生かし共創によって生まれた一点もの。そこには、百人一首の和歌から感じ取った情景や心の機微が、 細部に至るまで表現されています。

 

「どんな技術で作るかは気にせず、まずは思いのままデザインしてほしい。 作り方は自分が考えるから。」荘司が髙田にそう伝えたことで、自由な発想が生まれ、結果として、これまでにない作品が完成しました。

 

「今回できた作品は、眺めても楽しめ、身につけても楽しめる芸術品だと感じています。作品を手に取っていただく方には、単なるジュエリーとしてではなく、 和歌に込められた想いや風景、そこに込められた日本の美意識まで感じてもらえたら嬉しいですね。」 髙田はそう語ります。

 

「作品を手にした方が、指輪のストーリーや世界観に思いを馳せて、気持ちが少しでも豊かになってくださったら嬉しいです。」荘司も、作品への思いを語ります。

 

 

伝統と現代、クリエイターとデザイナー、それぞれの想いと技が響き合うことで生まれた「Resonance 〜伝統と現代〜」。この作品が、手にした方の人生に寄り添い、 新たな物語を紡いでいくことを願っています。

Creator

荘司 岳
長岡造形大学で金属工芸を学ぶ。独自のフォルムや発色加工技術を駆使し、繊細な色表現を得意とする。フルオーダーの制作を担当し 、個人作品では海洋生物をモチーフにした作品を多く制作。

Designer

髙田秋奈
東北芸術工科大学で日本画を専攻。自然や動物の繊細な特徴を立体的に表現する技法を得意とし、独自の色彩と組み合わせで新たな日本画の表現に挑戦。その感性はジュエリーデザインにも息づいている。