夜明けの雪景色、月の光のように

朝ぼらけ有明の月と見るまでに 吉野の里にふれるしら雪
asaborake ariake no tsuki to miru made ni yoshino no sato ni fureru shirayuki
daybreak—
bright enough to suggest
it’s the dawn moon,
the snow’s whiteness
on Yoshino village
Translation of Hyakunin Isshu by
Emiko Miyashita and Michael Dylan Welch
<現代語訳>
明け方、空がほのかに明るくなり始めた頃、有明の月が照らしているのかと思うほど、吉野の里に白々と雪が降り積もっているのだな。
坂上是則(さかのうえのこれのり)生没年不詳
平安時代中期の歌人で、代々朝廷に仕えた家の出身です。坂上是則の和歌は、自然の情景を情感豊かに詠み、四季の美しさを表現したものが多く、特に百人一首に選ばれたこの歌がよく知られています。
この歌では、夜明けの淡い光の中、雪に覆われた吉野の景色が、まるで有明の月の光のように白く輝いている様子が詠まれています。
「深々(しんしん)」は、この坂上是則の和歌を、四季の「冬」、花鳥風月の「月」として選び、デザインしました。夜明けに浮かび上がる雪深い吉野の里。その雪の静寂と光の美しさを形にしています。

「深々」のデザインについて
指輪の外側には、雪が降り積もる吉野の里の風景を刻み、静寂に包まれた山々の情景を表現しました。たくさんの雪が降った後の静けさを意識し、山々の稜線をなだらかに描くことで、和歌が詠まれた平安時代の景色を想起させています。
内側には、まさに深々(しんしん)と降り積もった雪景色を表現し、夜明けの淡い光が反射する雪の質感を描きました。外側の広がりのある山々の風景と、内側に刻まれた繊細な雪のきらめきが一体となり、指輪全体で和歌の世界観を描き出しています。

制作のこだわりと見どころ
「深々」では、雪と月の光の対比を表現するため、素材の選定にこだわりました。雪にはプラチナを、月にはホワイトゴールドを使用し、同じ白でも異なる明度を持たせることで、和歌に詠まれた「夜明けの月と見紛うほど明るい雪」という情景を再現しています。プラチナの持つ白の輝きが、夜明けの光を受けた雪の明るさを想起させ、月の光よりも雪が白く輝く幻想的な景色を演出しています。
指輪の外側に描かれている山々の稜線には、プラチナが象嵌され、夜が明けていく吉野の雪景色を際立たせています。さらに、月や雪の表面には細かな彫刻が施されています。繊細な彫刻と素材色のコントラストによって、和歌の幻想的な情景を形にしています。

「深々」の詳細
主要素材:Ta(タンタル)
装飾:WG(ホワイトゴールド)、Pt(プラチナ)
技法:高肉象嵌、平象嵌、薄肉彫り、NC彫刻
サイズ:22号 幅10mm
価格:¥1,048,300(税込)
※本作品は1点限りとなります。サイズの調整やアレンジ加工などのご注文は、出来かねますのでご了承ください。