これまでとこれからの人生が詰まっていく指輪
デザインに関するカウンセリングをした日から数週間後。完成したリングをドリアンさんにお渡し。
「わぁ〜!」と歓声とともに受け取ったあと、中指や人差し指に何度かつけはずしするドリアンさん。「素材なのか、加工なのか、すごくスムーズではめやすいです!」と、厚みも重さもあるリングですが、軽やかなつけ心地を喜んでいる様子。
対照的な2種類の金属、タンタルとプラチナのバイカラーのデザインには、「マサキのときとドリアンのとき、あるいはモードや気分によって、向きを変えてつけたら楽しそう。でも、マサキのときにリングをつけるのは本当に慣れていないので、ちょっと緊張します。この指輪に見合うように、おしゃれにならなきゃ!」と、日常から身につけるイメージが膨らんだようです。
そして指輪の両側にほどこされた“くぼみ”を目にして、ドリアンさんの心にこみあげてくる想いが…。
「本当にアタシ凸凹なんです。人生泥だらけ。でも、あのときすすった泥水とか脛の傷が、今はすごく自分の血肉になっているなと思えるんですよね。いいことだけじゃない、いろんな傷や汚れがあってこそ、今のアタシが形作られているんだってことを、このくぼみを見ていると感じますし、完璧じゃない自分を愛する勇気が湧いてきます」
指輪に込めたい想いやメッセージは、ドリアンさんから発されたものですが、実際、指輪として形になり、身につけてもらったとき、込めたメッセージがドリアンさんの心へ還っていったのかもしれません。この“くぼみ”がのちに、ドリアンさんの新しいインスピレーションへ繋がることに…。
さらに、「つけてみて思ったんですけど、自分のバックグラウンドや想いをお話しして作ってもらったリングって、やっぱり愛着が違うんですね」と、指にはめたリングを眺めながら話すドリアンさん。
ドラァグクイーンのときに身につけるアクセサリーは、フェイクの安価なもの、そして“武器”や“防具”のような存在だと最初に話していましたが、「この指輪は全然違うものが詰まっているから、これまでに味わったことがない新鮮な感覚です」とドリアンさん。
そして、できあがった指輪を「来し方行く末をともに行くもの」のように感じるとも…。
「この指輪は、自分の人生をすごく表しているなと思うし、今後の人生で、この指輪にさらに色々なストーリーや意味合いが加わっていくのが楽しみです」
大切な人から贈られたリングや、大切な人と想いを共有するリングも、強い力を届けてくれるものだと思いますが、他の誰でもない“自分自身”が詰まったリングだからこそ、山あり谷あり、デコボコ道の人生に、確固とした存在として、寄り添ってくれる…。それがLINK OF LIFEの指輪がもつ意味なのかもしれません。
さて、このプロジェクトはこれで終わりではありません。できあがった指輪をつけて、ドリアンさんからの“メッセージ”をあらためて体現してもらいます。そしてその姿を写真家ヨシダナギに撮影していただくというさらなるケミストリーも!
お二人のコラボレーションから、どんな作品が生まれるのでしょうか?そしてドリアンさんが伝えたいメッセージは…?
スチール撮影:伊藤圭
Interview & Writing
アーヤ 藍 ai ayah
PROFILE
2014年から約3年間、ユナイテッドピープル(株)で、様々な社会問題をテーマにした映画の配給・宣伝を行い、SORAとも、アメリカの同性婚裁判を追ったドキュメンタリー映画『ジェンダー・マリアージュ』を配給していたときに出会った。2018年春からはフリーになり、映画イベントの企画運営や、環境問題に関する学校向けの教材づくり、医療系記事のライティングなどを行っている。