髙橋 啓太
  • 職種

    クリエイター

  • 資格

    金属アレルギーマイスター

  • 入社年

    2014年度

お客さまにとって指輪を作る体験が
可能な限り楽しいものであってほしい

お客さまと対峙する緊張感

僕は普段、インストラクターとしてお客さまと一緒に指輪を作らせていただいています。普段ものづくりに携わっていないお客さまも多いので、実際に出来上がった指輪をお見せすると、びっくりしたり、喜んでもらえます。お客さまとしても、指輪を作る工程が一つのアトラクションになっているように感じることもあります。

お客さまとは個室で対峙しますので、そこでの体験は「可能な限り楽しいものであってほしい」という想いがあります。また、お客さまの目前で制作するので、絶対に失敗は許されないという緊張感は常に持っています。

 

例えば備品を一つ忘れるだけで、それを取りに行っている時間が場の空気を乱してしまいます。ですから、道具の準備には細心の注意を払います。またお客さまのリクエストにすぐ応えられるよう、普段から気を抜かず、職人として腕を磨くよう意識しています。あとは前日にお酒を呑みすぎないことでしょうか(笑)。

金属アレルギーマイスター

職業柄、金属アレルギーに関する知識はしっかりと身に付けたいと考え、勉強していました。あるとき、「金属アレルギー協会」の講習会をSORAで開催していただいたのですが、その際にレポートを提出し、「金属アレルギーマイスター」の資格を取ることができました。

 

結婚指輪は、人生の節目の大事なお買い物です。ですから、せっかく作った指輪を身につけられないという事態にならないよう、正確な情報をお客さまに伝えることが重要です。

 

金属アレルギー発症のメカニズムが花粉症と似ていると耳にする事がありますが、原理としては異なります。突然症状が出ることもあり、見極めが難しいため素材選びでは丁寧にヒアリングすることが大切です。

 

とはいえ我々は医者ではありませんので、「あなたは金属アレルギーです」と診断する事はできません。少しでも金属アレルギーの可能性があるお客さまには結論を急がず、専門機関の受診や病院でのパッチテストをお勧めしています。

思い出に残るリングストーリー

旦那さまは精密機械の検査を生業とされている方でした。独学でチタンを磨いて指輪を作り上げ、それを奥さまに渡してプロポーズに成功した、という素敵なお話を伺いました。そこで結婚指輪も、そのエンゲージリングを踏襲したデザインということで進めていました。

 

ところが、いざ指輪を納品する日になって、「受け取りに行けない」と連絡が入ったんです。理由は詮索しませんでしたが、その後の話では、奥さまが入院されていたとのことでした。指輪を作る過程でたくさんお話しをさせていただいた関係でもありましたので、「無事に指輪を受け取っていただきたい」と、ずっと気になっていました。

しばらくして奥さまの体調が回復されたとのことで、指輪を受け取りに来ていただきました。その際に僕が立ち会えたことを、2人はとても喜んでくれました。仕上がった指輪を見て、嬉しそうにしているお2人を見ていると、「いろいろなものを背負って結婚されるんだな」と、生き様を突きつけられた気がしました。そして、「この2人にはずっと幸せでいてほしい」と強く願いました。あのご夫妻とのやり取りは、SORAでの仕事を続ける上で精神的な支えになっています。「指輪は一本一本大事に、本当に大事に作らなければならないんだ」と、気持ちに楔を刺してもらったようでした。