宇宙撮影をする高度30キロの上空は「成層圏」と言い、気温マイナス60℃、風速は秒速40メートル(時速140キロ以上)になります。そんな過酷な環境を堪える機体はどうやって作るのでしょう?

気球、パラシュート、本体の3パーツ構成

1. ヘリウムガス気球
2. パラシュート
3. 本体(デジタルカメラなど電子機器を収納した機体)

ヘリウムガス気球

気球はヘリウムガスの量と気球サイズで破裂高度が予想できる気象観測気球(WetherBalloon)を購入するのがおすすめ。ヘリウムガスはイベント用に販売している一般的なもので大丈夫。高度30キロでは、気圧が地上の約100分の1になります。地上で直径2メートル程度の気球が直径9メートルにもふくらんで破裂します!

WetherBalloonの販売サイト
ヘリウムガスの通販サイト

パラシュート

落下する機体はパラシュートの空気抵抗によって秒速5メートル(時速18キロ)自転車くらいのスピードに減速します。この減速により落下の衝撃から内部の電子機器を守り、また着地の際に地上側へ与える被害軽減になります。

パラシュートは必ず開くことが最重要なので気球と機体の連結にパラシュートを使う手法が最もシンプルでおすすめ。ただ上昇中に受ける横風の影響が大きく平行移動距離が長くなりますが、落下すればパラシュートが開くシンプル設計は、なるべく複雑にしたくない無人機にはぴったりです。

デジタルカメラ

デジカメは今のところ、やっぱりGoProが軽量高性能なので必要十分でしょう。電子機器全般に言えますが、適正使用温度帯であるマイナス20℃~45℃の範囲以外になると電源が落ちたり、エラー停止したり、壊れて撮影ができなくなることがあるので注意。

 

追加したい装置

①低温対策
高度4キロを越えると気温は0℃以下になり、高度12キロでマイナス60℃まで下がります。そこから高度30キロに達する間はマイナス60℃~マイナス40℃の極寒状態が続きます。電子機器のバッテリーはマイナス40℃以下では溶媒が凍結して化学反応が起こらなくなります。そこでバイク用のグリップヒーターを使って機体内の電子機器を温める対策が必要です。

1. 発熱ヒーター グリップヒータ amazon

 

②高温対策
電子機器やバッテリー自体の発熱によって機体内部が高温になることがあります。45℃以上になると電流の流れが異常になったり、高温部分の部品が変形することがあります。電動ファンや放熱板で冷まします。
1. 冷却ファン
2. ヒートシンク放熱

 

③追跡と回収用装置
打ち上げた後の進行経路は風まかせですので、方向をコントロールする事はできません。
・ビーコン
・アラーム

組立ポイントと注意点

軽量化
機体をつくる上で最も注意が必要なのは重量です。とにかく軽ければ軽いほど扱いやすくなります。重量の変動によってヘリウムガス量や気球サイズ、パラシュートサイズ、進路予想まで変わってしまうので早めに総重量を決定しましょう。

重さ1キロを浮かすには約1000Lのヘリウムガスが必要となります。気球だけで1キロあるので搭載機器はもちろんシェルやパラシュートに使う素材、ありとらゆる全てを軽くて強いものにして無駄を省くこと。

パラシュートサイズは重量と落下速度から算出し、あとは丁寧に頑丈に縫い付けます。ヒモは、細くて強いザイロンや、ケブラーにするとさらに軽量化になりますが、縫うのがとても大変。

シェル
電子機器の保護と着地時の地上側への影響を考慮し、発砲スチロールやスポンジなど柔らかいシェルで機器を覆いましょう。シェルの外側は見失っても目立つカラーリングで塗装し、もしも他の人が拾った場合も考えて内容の説明と連絡先を記載しましょう。

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