“金”は宇宙からやってきた?金の歴史を誕生から追ってみた

金のそもそもとは?

現在も盛んに宝飾品に用いられる金。 その歴史を紐解いてみると、エジプトやメソポタミアにその起源を見ることができます。1万年近く前から人間は金に魅了されてきたのです。そんな人類の歴史と親密な関係にある金についてもう少し深く考えてみたいと思います。 

最初に考えたいのは、人類が金を手にするそれより前、そもそも金がなぜこの地球に存在するようになったのかということです。それを明らかにするためには、時間を138億年ほどさかのぼり、ビッグバンから話を始める必要があります。

ほとんどすべての物質は宇宙でできる

世の中の物質はすべて元素でできているのはご存知かと思います。その元素はさらに素粒子でできているのですが、今回はそこまでは掘り下げず、元素の話をしたいと思います。
金も元素の一つで元素番号は79、原子量(元素の「重さ」)は約197です。 宇宙に最初に発生した元素は水素とヘリウムだと言われています。それを作り出したのは約138億年前に起きたビッグバンです。

 

ビッグバンという爆発的な現象により水素とヘリウム(と少しのリチウム)ができました。原子番号は1と2です。 ビッグバンのあと宇宙は水素やヘリウム(や素粒子や暗黒物質)で満たされていたわけですがそれが徐々に集まってガスの塊ができ、それ恒星へと成長していきました。
そして最初の恒星「ファーストスター」がビッグバンから約5億年後に誕生します。 恒星の中では恒星内元素合成という現象が起こります。高温高圧になった恒星の中心部で、元素同士が衝突することによって核融合反応が起き、新しい元素が合成され、エネルギーが放出されます。
一番基本的な反応は水素がヘリウムになることですが、他にもヘリウムが融合して炭素ができたり、ヘリウムと炭素が融合して酸素ができたりしています。そして、恒星内の環境では原子量56程度の鉄までの元素が合成されることがわかっています。
なので、ファーストスターができたことで鉄までの元素が宇宙に生成されたといえます。

しかし、このファーストスターは非常に巨大な恒星で、わずか数百年で超新星爆発を起こしてしまいました。 超新星爆発は、恒星が核融合の材料を使い果たしたことによって起こる現象で、突然大爆発を起こして様々な物質を撒き散らし、中心には中性子星かブラックホールができます。 これによって鉄までの元素も宇宙にばらまかれたわけですが、この超新星爆発自体も非常に高い温度を発生させることで、核融合反応を起こします。しかも恒星内より高温高圧なので鉄よりも重い元素が作られるのです。 そこには金も含まれているので、金が最初にできたのはこの時だと考えられています。

地球の金はどこからやってきたのか?

こうして金は宇宙に存在するようになったわけですが、なぜその金が地球の中から見つかるのでしょうか。
その理由を明らかにするためには太陽が誕生した約46億年前からはじめる必要があるのですが、その前にいま宇宙にある金の多くは超新星爆発によって生まれたものではないという話を少ししたいと思います。 以前から、宇宙に存在している金の量から考えると超新星爆発以外の原因があるはずだと言われていて、その有力な候補として中性子星の衝突が考えられていました。

中性子星は超新星爆発によって生まれる星で、直径は20km程度で質量が太陽ほどあるという非常に密度が高い星です。
この星の中心核はほとんどが鉄でできていて、その中性子星同士が重力で引かれ合い衝突すると、爆発的なエネルギーが生じて核融合反応が起きて多量の重金属(鉄より重い金属)が生成されるのです。 

そしてその説が、2017年8月17日に立証されました。この日、中性子星の衝突で発生した重力波が世界で初めて観測されたのです。その爆発を観測すると大量の貴金属が含まれていることがわかりました。現在、宇宙にある金の多くはこれまでの中性子星の衝突によってできたものなのです。

太陽に話を戻すと、太陽は他の恒星と同様に星間ガスが集まってできました。
その組成の98%はビッグバンによってできた水素とヘリウムで、残りの2%を恒星で合成された炭素や酸素が占めています。この太陽ができたあと、太陽の周りにあるガスや塵が集まって惑星ができます。


地球はそのひとつなわけですが、恒星に近い場所では金属を多く含む岩石惑星ができ、遠い場所ではガス惑星ができます。 地球は岩石惑星なので金属を多く含んでいます。地球ができた約46億年前、地球は溶解した金属の塊のようなもので、それが少しずつ冷やされて固まっていきました。それとともに金は核へと沈んでいきました。では、地球の金はどこからやってきたのでしょうか。
地表にある金の大部分は約40億年前に起きた隕石群の衝突によって地表に降り積もったと考えられています。隕石群に含まれていた金も超新星爆発や中性子星の衝突によって生まれたものなことに変わりはありませんが。その金が地殻変動によって移動したり、微生物によって凝集されて鉱脈となり、その一部はさらに移動して地表に露出し、それが風雨にさらされて風化して砂金となりました。 

人類が、中性子星の衝突で作られた金の小さな固まりを手にしたことで、金の文化史は幕を開けるのです。

《ライター紹介》
石村研二

映画、環境、テクノロジーなどを中心に、greenz.jp、WIRED.jp、六本木経済新聞などに記事を執筆。宇宙と未来に興味が深く、暇な時はSFを読み、五次元空間に思いを馳せる。SORAの、結婚指輪とは無関係にも見える様々な実験や挑戦を見届ける予定。

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