ここでご紹介するのは、生涯に一度、母から娘に贈られたオーダーメイドの指輪です。
今年77歳になるお母様の「娘に特別なものを遺したい」という想いから、この指輪は生まれました。
シーズーの愛らしい口元をフォルムに
母娘お二人で選んだフォルムは、なんと愛犬シーズーのお顔。
ユニークで愛嬌のあるフォルムに、思わず笑顔になってしまう、そんな指輪です。
お二人が溺愛している小さな家族のモチーフが、提案されたいくつかのデザインの中から最終的に選ばれました。既にあるお嬢様の結婚指輪と合わせても、日常的に着けられるシンプルでいて遊び心のあるデザインです。
オレンジゴールドとグリーンサファイア
毎朝一緒に愛犬と草原を散歩するという、お二人の日常を映し出したかのようなデザインです。
指輪の素材は、太陽をイメージさせる温かな色味の「オレンジゴールド」。植物が好きで、家の中でもたくさん育てているというお母様のイメージに、植物を成長させる太陽を重ね合わせて選びました。
愛犬の鼻の位置には誕生石であるサファイアを留めて。サファイアの定番色である濃青色は自分らしい色ではないとの話から、ご用意した様々なサファイアの中から気に入ったグリーンサファイアを選びました。明るく優しい印象のグリーンは、オレンジゴールドにもマッチしていますね。
生きている間に遺したい、
母の想いを指輪へ
担当デザイナーの福澤は、今回のオーダーは今までご案内した中でも特別なものだと言います。お嬢様である水樹様を介して、お二人のこれまでのこと、これからのこと、お二人それぞれの好きなものやこだわりを汲み取りながら、指輪へのデザインを一緒に考えました。
長い間一緒に暮らし、苦楽をともにしてきた母一人娘一人。お母様はその間、子どもとの生活のために、ひたすら働き続けたそうです。
それまで自分や子どもの贅沢品を買わずにきたお母様は、お嬢様が結婚されたタイミングで「自分が生きている間に、娘に感謝の気持ちを形にして遺したい」という想いを口にし、戸惑いながらも、その並々ならぬ想いの強さを感じたお嬢様はそれを承諾。以前から気になっていたというSORAに、指輪をつくりたい旨をチャットでお伝えいただきました。
「感謝」を込めた花のマーク
内側に刻まれているのは、マーガレットとかすみ草を持つ二人の手のマーク。お母様の一番好きなマーガレットと、「感謝」の意味を持つかすみ草をお互いに贈り合うデザインです。
直接的な言葉ではない形で「感謝」を刻印に表現したいというお話から、花のマークに想いを託すことに。お母様の好きな花の中から感謝の花言葉を持つものを選び、オリジナルのマークにしていきました。
チャットでのお打ち合わせ
お二人は北海道にお住まいだったため、お打ち合わせはLINEのチャットを通して進められました。相談の方法がチャットでも、理想を追求する指輪づくりであることには変わりません。
いくつかのデザイン図(デッサン)や、色の異なるサファイアの写真、素材のイメージの伝わる写真などを送ったり、お二人のお写真や愛犬のお写真いただいたり、お二人の理想の指輪に近づけるよう、お互いにイメージを共有していきます。
また、担当クリエイターが制作したアルミ製のサンプルをご自宅にお届けし、幅を調整してフォルムを決めていきました。「デザイン画やサンプルが限りなく完成品に近く、仕上がりがイメージどおりだった」と水樹様から感想をいただいています。
担当デザイナーの想い
お二人の真っ直ぐに向き合う想いに、真っ直ぐに応えたかった、とデザイナーの福澤は語ります。
「やりとりが進む中で、綺麗事だけでなく葛藤もありながらのお二人の関係を心を開いてお話しくださいました。お二人の担当として信頼していただけたことが何より嬉しかったです。お二人の根底にある強く太い優しい想いと深い母の愛を、まるで自分ごとのように感じとりながら指輪に込められた感覚があります。
送っていただいた写真や指輪に込める想いをオーダーシートにも記載し、担当クリエイターとともに心を込めて制作をさせていただきました。」
指輪のタイトルは『母』
完成した指輪をご覧になって、水樹様からこんな言葉をいただいています。
「この指輪に私がタイトルをつけるとしたら『母』です。母は、自分が亡くなったらこの指輪に入って私を守っていくと笑いながら冗談交じりに話しています。でもそうなるのなら、もうこの指輪は母そのものですよね。
母が生きているうちは、この指輪をいつもつけている娘を見て目を細めるでしょうし、母亡き後は、私がこの指輪に励まされたり癒やされたりすることになると思います。」
完成した指輪と一緒にお二人の元に届けられるデザインブックには「生まれてきたこと。一緒に生きた時間。抱いた感情。全てに感謝を込めて。」と添えて。