プラチナの品質は配合金属で大きく決まる

イリジウム割プラチナの結婚指輪「銀雪」

プラチナの指輪ってどれも同じじゃないの?

結婚指輪の素材として定番のプラチナは、白く明るい輝きと希少性で人気があります。しかし、プラチナというだけで安心して正確な知識のないまま選ぶのはよくありません。実は、プラチナの結婚指輪の中に「歪みにくい指輪」と「歪みやすい指輪」があるのはご存知ですか?
こうした違いが出てくる理由の1つは、プラチナの結婚指輪に配合される金属や配合率が異なることが挙げられます。今回は、プラチナの強度に大きく影響する「プラチナの配合金属」についてご紹介します。

結婚指輪が歪む悲劇をなくすために

SORAのお客様の中には、他店で購入したプラチナの結婚指輪が変形してしまったために新しく作り直しを希望する方がいらっしゃいます。特別な思い入れのある結婚指輪が、突然着けられなくなるのはとても悲しいこと。SORAは現在9種類以上もの素材を扱っていますが、プラチナにも並々ならぬ想いで様々な研究や実験を繰り返してきました。
永く愛せる指輪にするため「より強く、より美しく」を追求してきた結論として、SORAでは10%イリジウムを混ぜたプラチナをメインに取り扱っています。

プラチナ

結婚指輪を100%のプラチナでつくらない理由

純度の高い混じりっけなしのプラチナが、結婚指輪のイメージとして良さそうですよね。しかし、プラチナはそのままだと結婚指輪として永く使うには柔らかすぎて傷がつきやすい素材なんです。そのため、特に強度を高める目的で、他の金属を5〜10%混ぜるのが通常です。つまり、結婚指輪に使うプラチナは正確には、別の金属を混ぜて強度を高めた「プラチナ合金」なのです。
ただし、最近では高純度(Pt999)でも圧延による鍛造製法で特別に硬くしたものもあり、一概に純度が高いから強度が低いとも言えないようです。 

歪みにくさを決める要素

①配合金属×②配合率×③成形方法で強度が決まる

①配合金属の違い(配合金属の性質が影響する)
②配合率の違い(配合金属の性質の影響力が変わる)
③成形方法の違い(金属の密度で強度が変わる)
④指輪の幅・厚み・形状の違い
⑤指輪をつける人の行動やライフスタイルの違い

歪みやすくなる原因は様々です。イメージしやすい要因には、細く薄い指輪の方がより歪みやすく、力仕事をする人は歪むきっかけが増えることなどが挙げられますが、ここでは①〜③の同じ形状の指輪で比較していきたいと思います。

①配合金属 × ②配合率で見るプラチナ結婚指輪の種類

SORA(ソラ)のプラチナ素材

よく使われている「配合金属 × 配合率」のパターン

【一般的なプラチナジュエリー(チェーンなど)】
 《Pt850》のパラジウム配合:プラチナ85% パラジウム15%
【一般的な結婚指輪専門店の配合】
 《Pt900》のパラジウム配合:プラチナ90% パラジウム10%
【海外ブランドや一部の結婚指輪専門店の配合】
 《Pt950》のルテニウム配合:プラチナ95% ルテニウムなど5%
【さらに一部の素材専門店の配合】
 《Pt999》 プラチナ99.9% 
【SORAの配合】
 《Pt900》のイリジウム配合:プラチナ90% イリジウム10%

※Pt=プラチナ、数字は品位(純度)を示しています。
Pt1000=プラチナ100%、Pt950=95%、Pt900=90%となります。

 

「配合金属 × 配合率」のパターンから分かること

結婚指輪のプラチナに配合金属として、主なものは「パラジウム」「イリジウム」「ルテニウム」の3種類。プラチナの一般的なジュエリーは、硬さを持たせるためにパラジウムなどの素材を15%混ぜています。一方、結婚指輪ではプラチナの純度などを優先して90%以上が多いようです。配合金属にはパラジウムを選ぶところが圧倒的に多く、「ハードプラチナ」と称している場合はルテニウムが多いようです。またいずれか2種類配合しているところもあります。また、純プラチナへのニーズに合わせて、高純度のプラチナを扱うところもあります。
SORAではイリジウム配合をメインに、指輪のデザインやお客様の要望によってはパラジウム配合、Pt999と使い分けています。

パラジウム・ルテニウム・イリジウムとは?

周期表のプラチナ

4元素の基礎知識

4つの金属は、いずれも物理的・化学的性質が似ている同じグループの白金族元素です。


【プラチナ/Platinum/Pt】 密度 21.4g/cm³、融点1769℃
【パラジウム/Palladium/Pd】密度 12.0g/cm³、融点1555℃
【ルテニウム/Ruthenium/Ru】密度 12.4g/cm³、融点2500℃
【イリジウム/Iridium/Ir】密度 22.6g/cm³、融点2443℃

密度を比較すると、パラジウムとルテニウムに比べ、プラチナとイリジウムはずっと重い金属だということが分かります。融点を比較すると、ルテニウムとイリジウムが高い融点を持ち、熱に強く耐食性や耐摩耗性により優れていると言えます。

プラチナ配合時の主な特徴

【パラジウム】
・プラチナを硬くしつつも、加工しやすい柔らかさを残せる
・純プラチナより軽くなる
・金属アレルギーのリスクが高い
【ルテニウム】
・少量でプラチナを硬くでき、プラチナの純度を高く保てる
・価格を抑えることができる
・純プラチナより軽くなる
・金属アレルギーのリスクが低い
・他配合に比べて美しさや品質の整った指輪にならない(当社比)
【イリジウム】
・プラチナを硬くし、耐食性を高くできる
・プラチナより希少なので、価格が高くなる
・純プラチナより重くなる
・金属アレルギーのリスクが低い

SORAがイリジウムを選ぶ4つの理由

イリジウムが持つ別格の存在感

SORAが素材を選ぶ上で最も重要視している「強度の高さ」「金属アレルギーの起こりにくさ」「指輪としての美しさ」「独自性」の4拍子を持ち合わせているのがイリジウムです。独自性に関しては、「これしかない!」と思わせるほど、イリジウムはあらゆる面で類い稀な存在感を発揮しています。
地表に存在する量の少なさは、希少性の高さで有名なプラチナのさらに10分の1。恐竜が絶滅した頃の地層には高濃度のイリジウムが存在しており、隕石によって地球にもたらされたと考えられています。すべての金属の中で最も腐食・変質しにくい耐食性を持つことや、触れた瞬間にはっきりと分かる重量感からは、地球外からやってきた特別感が漂います。宇宙からやってきた特別な金属なんて聞いたら、ワクワクしませんか?

イリジウムをプラチナ・パラジウム・ルテニウムと比較

1.硬さ

イリジウムは10%配合して硬くします。ルテニウムは少量でプラチナを硬くできる金属のため、プラチナの品位を高く保ったまま(Pt950)硬くするのに適しています。歪みにくさや傷のつきにくさでは、イリジウムやルテニウム配合はパラジウム配合よりも優れています。磨耗にも強いので、鎚目(つちめ)などのテクスチャーや表面デザインの凹凸を長持ちさせます。
ただ硬度=強度とは言えず、逆にルテニウムやイリジウムが多すぎると、硬すぎて粘り強さがなくなり、割れやすくサイズ直しがしにくいといったデメリットもあります。これらの配合率は、硬さと粘り強さの調和がとれた総合的な強度で決められています。
パラジウムはもちろんプラチナより硬いですが、ルテニウムやイリジウムより柔らかくなります。SORAでは適度な柔らかさが必要な木目金や石を留めるツメの部分にパラジウム配合を使用しています。

 

「GPのための金属アレルギー臨床(デンタルダイヤモンド社)」の中から歯科アレルギー外来受診患者の実態を調べたデータ「元素別のアレルギー陽性者数(1998-1999年)」

2.金属アレルギーのリスク

イリジウムは、プラチナやルテニウムと同様に金属アレルギーの起こりにくい金属です。
歯科医療で「銀歯」として使用され、近年金属アレルギーが問題となっているパラジウムの陽性率は比較的高く、下の図によるとプラチナのおよそ1.5倍、イリジウムの2倍となっています。(ルテニウムは歯科では使用されない)そのため、金属アレルギーに不安のある方は、パラジウムには特に注意が必要です。
関連記事:【素材選びが大事!】金属アレルギーにならないための結婚指輪選び 

中山秀夫先生が編集に携わる「GPのための金属アレルギー臨床(デンタルダイヤモンド社)」の中から歯科アレルギー外来受診患者の実態を調べたデータ「元素別のアレルギー陽性者数(1998-1999年)」より

SORA(ソラ)の金属配合表

3.色や明るさ

見た目にあまり違いはありませんが、最も白く明るいのはイリジウムです。
プラチナと比較すると、イリジウムはほんの少し白く、パラジウムはほんの少し黒く、ルテニウムはほんの少し青黒い金属です。SORA表参道本店になるマテリアルパレットで、Pt1000、イリジウム割、パラジウム割の色や質感を確かめてみてください。

4.重さ

比重をみると、イリジウム22.6とプラチナ21.4がずっしりと重いのに対して、ルテニウム12.4とパラジウム12.0は比較的軽い金属です。(純金は19.3、タンタルは16.6となります。)
イリジウムは全元素の中で2番目に重く、持った瞬間に存在感が際立つ金属です。

5.希少性

恐竜絶滅の研究で一気に有名となったイリジウム。地表に存在する量の少なさでは、イリジウムが群を抜きます。希少と言われるプラチナの10分の1。最も重い物質のため、地球深部に多く存在しているとも言われています。
プラチナに比べて、パラジウムやルテニウムは比較的手に入りやすく、安価な金属となります。手に入りやすさは、パラジウム、ルテニウム、プラチナ、イリジウムの順です。

二重の真空容器で保護された「国際キログラム原器」(撮影協力:国立科学博物館) 

6.耐食性、不変性

プラチナ90%イリジウム10%のSORAの配合は、つい最近まで使われていたキログラムを定義する「国際キログラム原器」の配合と同じ。安定した白金族の中でも、イリジウムは金やプラチナさえ溶かす「王水」にも常温で解けない最強の耐食性を備えています。その不変性ゆえに、国際キログラム原器にその配合が使われていたのです。
耐食性を比較すると、プラチナは王水に溶け、ルテニウムもゆっくり溶けます。パラジウムは王水・硝酸・熱濃硫酸に溶けます。


写真:二重の真空容器で保護された「国際キログラム原器」(撮影協力:国立科学博物館) 

7.元素名の由来(番外編)

意外と面白いのが元素名の由来。元素名からは発見された当時の時代背景や人々のイメージ、存在が知れ渡る経緯など元素の発見の歴史を感じとれます。ちなみに、イリジウムの名前は、イリジウムの塩類が虹色のように様々な色を呈することから虹の女神の名がつけられたそうです。ギリシャ神話の女神だなんて、ロマンティックですね。
【プラチナ】スペイン人たちからの呼び名である「ピント川の小さな銀 “platina del Pinto”」
【パラジウム】同時期に発見されて話題となった小惑星パラス“Pallas”
【ルテニウム】発見した化学者の出身であるロシアのラテン語名“Ruthenia”
【イリジウム】ギリシャ神話の虹の女神イーリス“Iris”

SORAの結論:より高品質のイリジウム配合プラチナ

プラチナと組み合わせる素材でSORAが最良と結論づけたのがイリジウム。適度な柔らかさが必要なデザインには、パラジウムを使用しています。ルテニウムを混ぜての制作では、納得がいく品質になることがなかったため、基本的に取り扱っていません。逆に100%イリジウムの結婚指輪となると、硬すぎて加工が難しいためデザインがシンプルなフォルムに限定され、価格がとても高価になります。
プラチナの良さを生かしつつ、より品質アップしたものがイリジウム割プラチナと言っていいでしょう。

さらに③成形方法で強度が変わる!

「イリジウム配合×鍛造」が最強!

「①配合金属」「②配合率」に「③成形方法」を組み合わせると、強度に大きな違いが生まれます。指輪の成形方法は、大きく分けて「鍛造(たんぞう)」と「鋳造(ちゅうぞう)」の2種類があります。鍛造は強度を高める制作方法なので、鋳造より強くなるのが特徴です。
★プラチナの強度実験(当社比)
パラジウム配合×鋳造 < パラジウム配合×鍛造 < イリジウム配合×鋳造 < イリジウム配合×鍛造

幅2.5mmの指輪に15キロの重りを吊るした素材の強度実験では、「鍛造の10%イリジウム配合プラチナ」は真円のままだったのに対して「鋳造の10%パラジウム配合プラチナ」は歪みが出ているのが分かります。丸いフォルムやより幅が細い厚みがない指輪だと、さらに歪むことが予想されます。

成形方法:鍛造と鋳造の違い

【鍛造(たんぞう):SORAの作り方】
SORAのプラチナの結婚指輪は、金属の塊を直接たたいたり、伸ばしたり、削ったりして成形しています。鍛造の名の通り鍛えて造る方法で、たたくことで金属の結晶が整って強度が増し、気泡などの内部欠陥がなくなり粘り強さが生まれます。また、密度が高いため、重量感や磨いた時の輝きが強くなります。デメリットは、複雑なデザインが難しいこと、鋳造よりコストがかかることです。
【鋳造(ちゅうぞう) :一般的な結婚指輪の作り方】
一般的な結婚指輪専門店の制作方法が鋳造です。溶かして液状にした金属を型に流し込み、冷やして固める加工法。キャストとも呼ばれます。メリットは、複雑な形状でも容易に加工でき、コストや時間もかからず大量生産に向いているところです。ロウを使ったワックス製法は鋳造の一種。デメリットは、密度が高くなく内部に気泡ができてしまうことがあるため、鍛造に比べ柔らかく強度が下がる点です。

結婚指輪

いかがでしたか?SORAがイリジウム配合のプラチナを選ぶ理由、そして鍛造にこだわる理由がお分かりいただけたと思います。イリジウム配合は、ふたりにとっての最高品質にこだわり、「結婚指輪にふさわしいプラチナ」を追求したSORAのイチオシ配合です。
プラチナを検討している方は、配合方法や作り方もチェックして、自分にぴったりの結婚指輪を選んでくださいね!

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